ことば

「行ってらっしゃい」と「お帰り」

家族を見送るのが好きです。
朝の「行ってらっしゃい」は、なるべく余裕を持って言おうと思います。
そしてその時、「気を付けてね」を必ず言います。
そうすると相手は「気」をまとうことができて、守られると聞いたからです。

…そんな見送りのやりとりが好きだと話したら、その人は帰りを出迎える「お帰り」が好きだと話してくれました。
それは私の思いよりももっと深くて、もう言ってもらえない「お帰り」があって…。

半年ほど前にお母様を亡くされたので、かつてお母様が「お帰り〜」と出迎えてくれたことを思うと、恋しくてたまらなくなるそうです。

だから、今、自分がお子さんの帰りを「お帰り」と迎える時間を大切にしている。
そして実家に帰る時も、わざとお父様が外出から戻るころを先回って行って、お父様に「お帰り」を言うようにしているそうです。

なんて心優しい…その話を聞いた時、私がまだ感じられていない深い悲しみを知っていて、それだからこその優しさを感じ与えられる人だなぁと。

その人が受けた幸せ、直接的には失った幸せ、だからこそ与えられる幸せ…それらが重なって、何かとても温かなものを感じたのでした。

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