出版不況と言われ続けるなか創業し、埋もれた文学作品を復刊してきた「夏葉社」という出版社があります。なんと、『たった一人の出版社』。
代表の島田潤一郎さん(43)は、編集から営業、発送までをたった一人で行うのです。ベストセラーは決して狙わない、と。 そのコンセプトに惹かれました。
今の世の中には、あっという間に読めて、すぐに必要なくなる本が多い、と。
「そんな本はつくりたくない」、だから「できるだけ他社がやらない仕事をする」。
島田さんが探すのは、他社が手をつけていないか、手放してしまった領域の本です。
他社がやりそうだと思った企画からは手を引く、それは『読者を万人の単位で捉えるか、具体的な人として捉えるかの違い』。ここにぐっときました。
今の仕事についてから習ったことですが、人に向けて話す、書く・・・そういう機会があります。それが1人なのか、10人なのか、100人なのか。
以前の私は、その先にいる人が多くなればなるほど、何を伝えればいいのか、難しくなると思っていました。
でも、「たった一人でいい。この人にこれを伝えたいと思うことを明確にして、伝える。そうすればそれは、その先にいる多くの人にも伝わる」ことを教わってから、すごくそこを意識するようになりました。『フォーカスする』ということ。
この人にこれを伝えたい。・・・伝わるかどうかは、相手がいることだから、わかりません。それでも、伝えたいと思って、話す、書く。
伝わるかどうかよりも、伝えたい人や、事柄に、ぐっと集中してそれを「思う」こと。
そこを大事にするようになりました。
言いたいことを並べていたり、いいことを言おうと力が入っていたり、つい余計なことに時間をさいてしまうことが、今もよくあります。
島田さんのように、世の中に向けて発信するにも関わらず「読者を具体的な人として捉える」こと。その一点に集中する潔さ。見習いたいと思いました。