『羊と鋼の森』を読んでいます。
宮下奈都さんの小説です。
数年前に本屋大賞を受賞した作品です。
ピアノの調理師が登場するのですが、この物語の主人公である新人くんが、尊敬する先輩に「どうするのが正しいんでしょう?」と聞く。すると、その先輩が言うのです。
「この仕事に、正しいかどうかという基準はありません。
正しいという言葉には気をつけたほうがいい」と。
…ここです。
私が、いいな~と思ったのは。
何気ないひと言ですが、深いなぁと思ったのです。
「正しい」って、いったい何をそう言うんだろうと思って。
物語の展開に関係なく、こういう発見というか、自分に何か考えさせてくれる言葉に出会えると、嬉しくなります。
話を戻しますが、「調律」という概念をどう理解し、それを体現するかは調律師の職人技というか、個性とも言える、要はそれぞれ違うのです。
お客さんに「もっとこういう音が出るようにしてほしい」と言われて、その言葉をどう理解して、それにどう答えるか。
そこの工程を「正しいかどうか」で判断することはできない…というのが、小説に出てくるのでした。
でも私はもっと自分ごとで、生きていく中で色んなことが起こって、結局のところ何が正しいのか、その時はわからないな〜と思うのです。
あとになってみて、ようやく意味を知れるというか。
まだ物語がどうすすんでいくのか、始まったばかりですが。
細やかではっとする表現が随所にあって、楽しみに読んでいます。