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食に思いを

 先日、自分の過去のことについてお話させて頂く機会がありました。
少し重たい話になってしまいそうですが、お許しください。
私が中学3年生の時、父に莫大な借金があることがわかりました。
ある日、突然の出来事でした。
その夜、まさに逃げるように母と妹たちと親戚の家に身を寄せ、
家を失い、父と一緒の生活も出来なくなりました。
それから色んなことがあって・・・。
それでもありがたいことに、たくさんの人に支えられて、
母も私も妹たちも皆、 「あの時があって今がある」と思えているのです。

両親は離婚し、独りになった父だけはまだ、どうしても 自分の人生は「こんなはずじゃなかった」という思いがぬぐいきれていないのですが。 

 その時の私たちを支えてくれたひとりとして、母方の祖母の存在が大きかったです。
しみじみ思い出したこと。
それは、専業主婦だった母が仕事を始め、けっこう忙しくなっていき、
私たちの食卓を支えるために、祖母が宅急便でおかずを送ってくれたのでした。

それも毎週末、届くのです。クールの宅急便。
そもそもちょうど「クール宅急便」がスタートした頃でした。
今の時期だったら…かぼちゃのポタージュ、かぼちゃの天ぷら、牛肉の付け焼き、ささみのフライ、 そしてすごく印象的なのが、形の整ったロールキャベツ。
ロールキャベツを作るとどうしても、色んな大きさになってしまうのに、
祖母のは、きっちりと同じ大きさなのでした。
そしてどのおかずも本当に、美味しかったのです。

 それを思い出したのが、ラオスの文化である「托鉢(たくはつ)」について 知ったからです。
仏教国ラオスでは、家が貧しくて食事や教育が十分に与えられない場合などに
修行僧として寺院に入るのだそうです。
少年たちは朝4時に起きて身支度と掃除を終えると、「托鉢」に入ります。
→托鉢とは信者の家々を巡り、生活に必要な最低限の食料を乞うことです。
修行中の身になったら、たとえ母親でも、話しかけたり、目を合わせることすら許されない。
唯一、食べ物を供することは許されるので、一般的なのは蒸したもち米だそうですが、 それを渡すことで愛情を伝えるのだそうです。

 ラオスのお母さんたちは、どんな思いでもち米を蒸すのだろうかと、それを思ったらたまらなくなりました。
ただただ、息子の無事を祈って、思いを込めることでしょう。 
 
 話が戻りますが、祖母は気丈な人で、おかずを送ってくれながら、
愚痴のようなことは一切、言いませんでした。
むしろ楽しんでおかず作りをし、クール宅急便の重宝さを毎回ありがたがって、
「美味しかったよ」と伝えると、とても喜んでいました。 

 関西から東京へ。直接は見えない私たちの生活を思って、
「がんばれ、がんばれ」って 気持ちを込めてくれたと思います。
まさに、パワーフード。
食べたもので、体も心もつくられる。
私の体は、愛情でできているなぁ。
しみじみありがたいと思うことでした。







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