作家の川上弘美さん。初期の作品である『センセイの鞄』は、大好きな恋愛小説です。そこにしかない世界観が何とも言えず、読み返すといつも、温かさと切なさとで、胸がいっぱいになります。
その川上弘美さんが、芥川賞の選考委員をした話が、エッセイに書かれていました。このご時世、賞の選考は、会場に行くのかリモートで参加するのか、審査員が各自で選べたのだとか。
印象的だったのは「どんな選考でも、委員はみんな、本当にがんばるのです。」という言葉。
「どの作品がよかったですか」と聞かれると、とても困るそうです。
どの作品も、いいから選考段階まで上がってくるのですよね。
そして私がいいなと思ったのは、「候補者も選考委員も、みんな小説という原野を走っている仲間」という一文。「たまたま今は、選ぶ選ばれるという異なる立場にいるようにみえるけれど、実際には差なんかないのだ」と。
「こんなふうに書けないなぁ自分は」と思うのだそうです。
とっても正直なメッセージですよね。
人と比べて優れているかどうかなんて、結局のところ誰にも決められないんじゃないでしょうか。
私は以前の自分と比べて、自分を褒めることがずいぶん上手になりました。
自分には自分がついている。
例えば仕事の上でも、誰よりも私のことをわかって褒めてくれるのは私だなぁとまで思っています(笑)。
原野のはるか先へ向かって。
歩みを止めずに行きたいと思います。