作家であり、エッセイストの岸田奈美さん。ご両親に対する思いを語った記事を読みました。
なんとも心に残る内容でした。親って、道筋をつけてくれるものなのだなぁと改めて思ったほどです。
岸田さんが中学2年生の時、急性心筋梗塞で他界されたお父様。いつも人を笑わせようとする人だったそうです。
友達がうまくできなかった7歳の岸田さんに 「お前の友達はこの箱の中になんぼでもおる」と、 当時まだ珍しかったiMacを買ってくれた。
実際にそこから、チャットや掲示板に文章を投稿するようになり、ネットの世界に浸かり、そこから今の作家という職業にもつながったというのですから、 何がどうなっていくか、わからないなぁと思います。そして、親の示す方向というのは、影響するものなのですね。
お母様は穏やかで優しい、「愛にあふれた人」だそうで、これまた印象的なエピソードでした。
岸田さんにはダウン症の弟さんがいるのですが、 幼い頃、どうしても弟ばかりをかまうお母様に 「私より弟が大事なんでしょ」と泣きながら言ってしまった。
そうしたらお母様は岸田さんを抱きしめて、 「なみちゃんのことが一番大事。弟のことは気にしなくていい。なみちゃんの幸せが、お母さんにとっても一番の幸せだから」と言われたのだと。
その言葉のおかげで気持ちに余裕が生まれて、弟さんと良い関係を築くことができたと書かれていました。
親が自分に対して何を言ってくれるか。 正しいかどうかではなく、嘘か本当かでもなく、真剣に本気で伝えてくれたなら、それが救われる言葉になるのだなぁと感じました。
私は娘が小さかった頃、弟ができたことを不憫に思って、「ママは〇〇ちゃんのことのほうがいっぱい好きだよ」と言っていました。
私は変に生真面目なところがあって、それを息子がきいたら悲しむかなとまで勝手に思って、 「上の子のほうが一緒にいる年数が長いから、その積み重ねのぶん、好きな気持ちが多い」と自分の中で納得した上で、言っていました(笑)。
今それを言ったら、二人とも引くだろうなぁ(笑)。
さておき、岸田さんのお母様のその思いが、どれほど強く真剣なものだったか、そこを思うとたまらなくなります。そしてその瞬間を逃さなかったことが、すごいなと。
その後、お母様は大動脈解離を患い、車いすの生活となるのです。ダウン症の弟さんと、認知症のおばあ様のこともすべて、岸田さんが見ることになるのです。
怒りや悲しみはそのままにすると自分を苦しめるから、笑い話にすることで区切りをつける。 『ユーモアは生きるための処方箋』とよく言われるそうで、これはお父様譲りの考え方だそうです。
たくましく生きる姿に、色々と感じさせて頂きました。