劇作家の渡辺えりさん。なんともパワフルで魅力的!日経の夕刊でコラムを担当されるようになって、嬉しく思っています。
渡辺さんは、お父様が95歳、お母様は91歳。 ご健在で、故郷山形の介護施設に入られている、その様子がつづられていました。
お父様は介護施設への入所を、10代のころに働かれていた軍需工場の寮と重ねて認識され、「親元を離れての一人暮らしも戦時中を思えば耐えられる」と言われるのだとか。
そしてお母さまは、時に子供に返ったように、大笑いしたり泣きじゃくったりを繰り返す…。
いくつになっても親は絶対的なもの。 でもいつしかそれが、こちらが守る存在になるのだなぁと想像します。私は長女(第一子)で、やはり大事にされたのだろうと思うのは…そのせいか妹たちに「親が衰えるところを受け入れるの、苦手だよね」と言われます。
渡辺さんが高校を卒業後、演劇をやるために東京に行くと言うと、猛反対されたご両親。
「娘はいないと思ってほしい」と激しい言葉を残して上京。その後、お父様からは毎日はがきが、お母様からもしょっちゅう手紙が届いたそうです。 その思い、温かいことですね。
大きな段ボール3箱にもなる、その手紙の数々を読み返すと、今は思うように会話ができないご両親の言葉が胸にしみる、と。
その中に、開封しそこねた手紙があって開けてみると、お母様の手紙に3000円が入っていて、泣いてしまった、と。
「あの時の両親の歳より上になってしまった娘が、手紙の文字に甘えている」。
これを読んで、胸がいっぱいになりました。
選んで、好んで親子になったわけではないし、いい関係も、そうでない場合もあるでしょうし。 たまたま私は今、父とも母ともいい関係を築けていることを、とても幸福に思います。
これは決して当たり前ではなくて、本当に幸運なこと。どれほど感謝してもしつくせない、幸せなこと。そう思えています。