なんとも今っぽいなぁ…そう思いながら手に取った小説。『晴れ、時々くらげを呼ぶ』…鯨井あめさんの作品です。
父親を亡くしたあと、他者と関りをなるべく持たずに、毎日をこなすように生きてきた主人公、男子高校生。図書委員の彼と、風変わりな後輩女子とのお話です。
文章に「みずみずしい」感じと、どこか古風な言い回しもあって、素敵な世界に浸ることができました。
未読のページが残り少なくなった頃に。図書委員の先輩で、受験生。それでも受験勉強の合間に読書を絶やさない彼女。名わき役の言葉に、はっとしました。
「あたしの構成物質は小説じゃないよ。基盤は自分」
そう答えたあとに続く言葉です。
『種子があたし。育つには肥料と水と太陽が必要。ときには嵐に耐えることもある。 風に飛ばされないように、立派な根を張るために。 いつかは花を咲かすかもしれないし、咲かさないかもしれない。 でもできれば咲かせたい。だから生きる。 きみだってそうでしょ』
「でもできれば咲かせたい。だから生きる。」
人には皆、そう思う瞬間があるのではないでしょうか。
いいなぁ、いい言葉だなぁ。 この箇所を眺めたくて、また読むと思います。おすすめの1冊です。