香山美子さんの絵本、『どうぞのいす』。不意にこれを思い出しました。
先日、帰りの電車内でのこと。車内は混雑気味で、その日は荷物が重くて、それでもハードカバーの本を読みたくて…両腕にかかった重さに限界を感じながら、立っていました。ふと見ると、隣の女性の前の座席が空いている…でも、その高校生ぐらいの女の子は、座ろうとしません。
ちょっと迷ったのですが、
「あのぅ…そこ、座らないんですか?」
と聞いてしまいました。
その女の子はびっくりした顔で私を見て、
「あ、どうぞ。」と。
申し訳なさそうに、戸惑いながらも、すごく優しい表情で、こちらを見て言ってくれました。
その表情と「どうぞ」のひとことが忘れられなくて、思い出したのでした。
『どうぞのいす』は、うさぎさんが椅子を造り、いつでもお座りください、という意味でそれを『どうぞのいす』と名付けます。
その後、どうぞの椅子の前に現れた動物たちは、それぞれに「どうぞ」の意味を捉えて、いすに「気持ち」を「置いて」行きます。
『どうぞのいす』から思いやりの気持ちがつながっていく…というストーリーです。
あらためて「どうぞ」って、いい言葉だなぁと思いました。優しさを込められるから。
そしてこんなふうに感じさせてくれる絵本て、いいなぁと思います。