脚本家、北川悦吏子さんの、告白のようなコラムに触れてから、しばらく言葉にならずにいました。
「どうしたって生かされる」というタイトル。
北川さんは現在、10万人に一人の割合でしか発症することのない難病を2つも抱えているそうです。
10年以上にわたる闘病生活の間に、左耳の聴覚障害も起こり、痛みと不自由さから解放されることのない毎日。
コラムに書かれていた北川さんの思いは、とてもまっすぐで鋭いです。
「例えば一瞬で命が失われた、なんてニュースがあるとする。ある夜いきなり倒れて、次の日の朝に帰らぬ人になった。それを聞いた私は、内心、いいなぁと思っているんである。」
「誰かがガンで死んだ、というのを聞いてもすぐに、その人の闘病期間が知りたくなり、短ければ短いほど、あぁいいなぁと思うんである。」
「不謹慎なことはわかっている。それが世間の常識と違うこともわかっている。…本当に本当に、つらい闘病生活を重ねてきた私たちの本音である。
どうしたって生かされる。
苦しくたって、つらくたって、痛くたって、先が見えなくたって。もう死んでしまいたくても、生かされるのが医療の基本である。」
同じ「生かされる」という言葉を、私は違う意味にとらえて心に留めていました。
突然に亡くなった方の死を思うとき。あぁ私は「生かされている」のだと。だから精一杯、今日を生きなきゃ!と。
私は幸いにして、とてもとても健康な身体をもっています。 ちょっとやそっと無理をしたところで、びくともしないのです。
こんな私と対称的な生き方をされている方々のことを、改めて考えました。思いを寄せました。でも答えはまだ、出ません。
北川悦吏子さん脚本のドラマ、ご存知の方も多いのではないでしょうか。私は安田成美さんと中森明菜さん主演の『素顔のままで』がとても好きでした。(近々DVD化されるそうです!)
北川さんは、別のコラムにて「自分の書いた作品の登場人物たちに、教えられ、励まされます。」とも書いておられます。
『どうして私ばっかりこんな目にあうの? 私よりどうでもいいやつ、渋谷歩けば、たくさんいるじゃない?』
04年に放送されたドラマ「オレンジデイズ」で、障害を抱えた柴咲コウ演じるヒロインの、追いつめられた時の、本音のセリフ。
そしてこれは、北川さん自身の言葉です。
『そう。愚痴ってばかりでは、本当に、人生はつまらない。人生が死んでしまいます。』
苦しみとともにある毎日、そんな北川さんがお住まいの岐阜県に、仕事で行くことになりました。
今、早朝から新幹線で、向かっています。