コピーライター、太田恵美さん。
コラムを読んでCMを思い出しました。
JR西日本。四季折々の京都の美しい風景、音楽がクライマックスとなり、息をのむように見惚れていると、そこに必ず、長塚京三さんの、このセリフ。
「そうだ、京都、行こう」
いいな~、行きたいな~と思ったものでした。
旅行は好きではないのですけれど(笑)。
こんな私でも、あのCMの瞬間にはそう思ってしまいます。
このセリフの生みの親が、太田さんです。
1コピーにつき100案。そう教えられたそうです。
これは根性論ではないし、数撃ちゃあたる、ということでもない。
「言葉を出し尽くした先に、苦肉の策として、自分にはない言葉を探す旅に出るんです。
自分をはみ出し、別の人間の次元になるまでには、とにかく量を書くこと」、なのだと。
仕事でものを考えるとき、私もあります。
それは何かのテーマであったり、タイトルであったり、目的は色々とありますが、
何事も「数を出せ」と言われます。
でもその指示の意図するところは、まさにこれ。太田さんの言う領域に達するまで、考えることが大事なのだなぁと、改めて納得しました。
あのコマーシャルの目的は、京都に人を「振り向かせる」こと。
そのための切り口を探そうとして、外国と比べてみようという段に、ふとかえりみてみると・・・
「海外の情報にかぶれていやしないか。故郷の歴史はほとんど知らないのではないか。」「パリやニューヨークにちょっと詳しいより、京都にうんと詳しいほうがかっこいいかもしれない!」と思い至ったのだそうです。
すんなりとは決まらなかったキャッチコピー。
長塚京三さんの読み上げるそれを聞いたとき、「自分が生み出した言葉に時代性が宿った」と感じたそうです。嬉しくて跳びあがったそうです。そうだろうな~。
生みの苦しみのぶん、それがあるからこそ、まっすぐに喜びを感じ取れるのでしょう。何事も、その過程が深みを生むのだと思います。