この年になると、大切な人の死を経験することはもちろんあるし、知人やそのまた先の知り合いの、思いもよらぬ死の知らせを受けることもあって、そのたびに死について、少し考えてしまいます。
いつか必ず訪れる死。それがいつかは平等に、誰にもわからないのですね。
「死」がテーマとなっている、とても素敵な本があります。
木皿泉著 『さざなみのよるに』
この本は、一人の女性が、末期癌で亡くなる所から始まります。
死を直前に感じる日々、そこでは、死の淵に立つとこんな風に世界が見えるのだろうか、と思ってしまうほど、美しい情景描写です。
淡々と、いえ堂々と、死を受け入れて生き抜く様は、本当に潔いです。
そしてその後の物語も秀逸です。
亡くなってしまうその女性が、いかにして生ききったか。
まわりの人々がそれをどう受け止めていくか。
それは切なさの中にあって、人が生きる、かけがえのなさを感じます。
特別なことは書かれていないようで、でも実は生きていく上で大切なことがたくさん書かれていると感じます。読後「宝箱のようだな」と私は思いました。
きっと大切なものが見つかる、そんな本です。